• 内田 治良/Uchida Chiharu
  • 2022年修了(社会人12年目に入学)
  • ゲンキー株式会社 戦略本部商品本部PB開発部部長。院修了と同時に、プライベートブランドの開発部長(マーチャンダイザー)に就任。外国人を含め16名のチームをマネジメントする。

>>入学の動機
自社の企業規模が拡大し、SEや物流のプロフェッショナルなどあらゆる分野の専門家が入社在籍する中で、そういう人たちと渡り合っていけるのかという懸念を抱く。社内外のスペシャリストをつなぐ立場になる上で、知識やスキルを深めたいという思いで志望。

  • 黒川 武志/Kurokawa Takeshi
  • 2022年修了(社会人20年目に入学)
  • 株式会社パッケイ 常務取締役。東京、金沢に支社を設置し、自ら営業活動にも飛び回る。在院中からサステナブルな商品開発に意欲的に取り組む。

>>入学の動機
周りから「MBAを取った」「外部企業へ出向になった」といった話を聞くたびに、外部で学んでみたいという気持ちが強まる。自社が伸び悩んでいる時期でもあり、大学院で学ぶことでその打開策を見つけたいという思いを抱いた。

  • 芦澤 咲/Ashizawa Saki
  • 2023年修了(社会人4年目に入学)
  • 在院中に福井銀行から株式会社ふくいのデジタルへ出向。現在、デジタル地域通貨事業でアプリの企画や運営を担当。プレーヤー兼プロジェクトマネージャーとして奮闘中。

>>入学の動機
福井の地域活性化に興味を持ち、福井銀行にUターン就職。具体的に何をすればいいのか考えるなかで、専門的な知識や人脈づくりが自分を変えるきっかけになればと思い志願。

  • 吉田 祐記/Yoshida Yuki
  • 在学2年生(社会人20年目に入学)
  • 福井中央魚市株式会社 執行役員 商品部部長兼養殖事業部部長。在院中に執行役員に就任。風通しの良い組織を目指して、横断的なマネジメントを行う。

>>入学の動機
福井大学で開催された経営者講義に参加した際、大学院の存在を知る。会社の業務とのタイミングが合わず一度は入学を断念したが、その後、再挑戦。社内で他に数人が希望していたが、学びたい強い気持ちをアピールし念願が叶う。

SCROLL

職業もバックボーンも異なる院生たちは、2年間をどう過ごしたのか。
修了後、仕事への取り組み方、ものごとのとらえ方、考え方、
ひいては人生に変化はあったのか。
そのあたりが垣間見える、修了生と在院生の座談会です

メリットとハードル

2年間でもっとも有意義だったことと苦労したこと

まずは、この大学院で学ぶメリットとデメリットについて話しましょうか。

実は私はメリットしかない!

おお~。

海外実地研修やディベートなど貴重な体験の連続で、2年間はあっという間。立場も年齢も違う人たちと真剣に意見交換できる場も初めてだったので、メリットしか感じていないです。もちろん大変だったことはあります。タイムマネジメントですかね。プライベートの時間を削って課題を仕上げていましたから。

私の場合は、費用対効果が大きかったというのがメリット。ビジネス書の選定方法や海外展開する上での法律、リーダーシップなど、ひとつのジャンルを集中して掘り下げるというより、学ぶべき教養・知識の概要を把握できて、その中から必要な知識を選び取るスキルを身に付けられた。2年という期間もちょうどいいと思います。

仕事と並行してなので、タスクマネジメントができるかどうかで大変さは変わってきますよね。メリットは、みなさんの言うとおり、さまざまな分野の理解度が上がること。歴史や経済、宗教、情報処理などを学ぶことで、自分が今抱えている課題に風穴をあけてくれるし、前進する糧にもなる。自分を磨き上げる期間として2年間は妥当です。家族の協力も得られて、勉強がしやすかったというのもあります。

私の家族も協力的です。まだ在院中で最終レポートの作成が残っていますが、デメリットは感じたことがありません。包括的に学ぶ上で1年目の学びが実感として理解できるのが2年目。いろいろな視点で掘り下げたり、海外実地研修で見聞を広げたりすることで、以前の学びがやっと自分のものになる感じ。そう考えると、2年間はちょうどいい長さです。

ただ、課題の提出は相当大変でしたよ。管理者行動論は20~30ページのレポート課題を提出。集中講義のプレゼン資料を短期間で仕上げなくちゃいけない時はつらかった。

私も海外出張の飛行機内で、課題のレポートを書いていました。

ディベートもキツかったです。国際関係論の授業で「第三次世界大戦は起きるか、起きないのか」をテーマにディベートをしたのですが、これが難しい。3人のチームで論を組み立て、反論していく。終了間際にアドレナリンが出てなんとかクリアする感じ(笑)。「自分ってこんなに議論ができなかったっけ?」という気持ちになりました。

まだ、入学したてで、仲間意識もあまりない頃のディベートは、たたき合いみたいになりましたよね。負けたら2日くらい落ち込んだりして(笑)。

「働く」×「学ぶ」
からこその変化

自分が変わる瞬間について考える

2年間を終えて自分の中で変化したこと、例えば、物事のとらえ方が変わったとか、仮説を立てて考えるようになったとか、そういう実感はありますか。

表面的な事実だけを捉えるのではなく、背景を調べるようになりました。どこかの企業の売上がアップしたというニュースを見たとしたら、その事実だけではなくて、なぜそうなったのか、同業他社はどんな状況かなど、深く調べてみようという気持ちが出てきます。実際に調べたりもします。事前調査の大切さを学びましたから。

私は自信が付いた、ということが大きな変化です。福井県内の企業経営者にインタビューをしたり、SDGs関連のトピックスでマスコミから取材を受けたり、ニューヨークで研修をしたり……そんなさまざまな経験が自信につながったように思います。

その感覚なんとなくわかります。私は12年間、チェーンストア業界の教育をみっちり受けてきました。ある意味、洗脳かもしれません。ここでさまざまな職種のメンバーとディスカッションすると、私がこれまで学んできたことのどこがおかしくて、逆に一本筋が通っているのはここだ、というようなことを考える機会になりました。で、チェーンストア業界のゆくすえを考えたときに、以前よりも自信を持って、この産業には未来がある、と思えるようになりました。

ディスカッションを常習的に経験すると、人の意見を聞けるようになるんですよ。

えっ、それまでは、他人の意見を聞かなった?(笑)

父が社長を務める会社で、トップの意見が会社の意見という環境。経営者側に立つとどうしてもトップダウンになりがちです。授業でファシリテーターを経験したことで、人の意見を引き出して、みんなが納得する着地点を見つけるスキルが身に付いたように思います。周りの意見を尊重するようにもなったので。

私は20年間、同じ企業に勤めてきたので、以前は物事を経験値からくる感覚で判断していたように思います。でも、物事には根拠があり、論があり、段階があると学んだことで、根拠をもとにジャッジできるようになりました。あとは、長期的なスパンで発想し行動できるようになったことは、大きな変化です。

海外実地研修の意外な産物

世界を見つめると、「福井愛」が強くなる?

この院での2年間で、もっとも印象に残っていることでいうと、私はやはり海外実地研修です。5か国13都市を巡ったのですが、計画を立てるのも現地へのアポイントを取るのもすべて自分でやるんですよね。アポイントのメールを50通送っても、返信があったのはたった2通で、現地に行ってから飛び込みで研修の依頼をしました。

芦澤さんの行動力、ずば抜けているよね!(一同うなずく)

街角で、銀行員っぽいなと直感で思った人に話しかけて交渉したり(笑)。大変でしたが、やればできるという自信がつきました。英語でのインタビューも、録音して何度も聞き返せばなんとかなる。学びの収穫って、主体的に動いてこそ大きいように思います。

私はちょうどコロナ禍だったのですが、思い切ってニューヨークで実地研修をしました。現地では福井の資材メーカーSHINDO※の店舗で働き、自社商品を海外展開するテストマーケティングも経験して。コロナ禍でも普通に仕事ができましたし、海外ビジネスの戦略を考えるいい機会になりました。今は包装業界でもSDGsは当たり前という状況で、環境に考慮した包装資材を提供しつつ、さらに進化させている。弊社でも100%自然に還る不織布を提供し、イギリスのホテルで採用してもらっています。
※福井県あわら市に本社を置く服飾副資材などを手掛けるメーカー

私はコロナ禍で海外実地研修を断念したのですが、院修了後、自分の職場環境ががらりとグローバル化したんです。PBブランド開発の部長になり、一緒に働くチームには中国人や台湾人といった外国籍の方がいて、アジアを中心にソーシング活動をするようになって。大学院での学びが続いているような感覚です。

今は、多様性の時代です。単にグローバルということだけでなく、さまざまな考え方を認めながら組織体制を整えていく必要がありますね。

日本人だけと仕事をしているほうが楽なのかもしれませんが、変化に対して寛容でないと今の時代に進んでいけない。優秀な同じ人ばかり揃えて、精鋭部隊をつくれれば楽かもしれないけれど、実際は無理ですよね。私の部下は21歳から56歳まで幅広くいますし、そのチームスタッフを、どういうやり方でどう引き出すマネジメントができるか。変化に飛び込んでいくしかないと思っています。

私はこれまで、海外取引を行っている商品部と、1次産業に特化した養殖事業部の2部門をマネジメントしていたのですが、院を修了後、執行役員になったことで鮮魚部や冷凍部もすべて視野に入れて横断的なマネジメントをしなければならなくなりました。キャリア採用が増え、新卒の新入社員も入ってくる。働き方はもちろん、将来のイメージや結婚観など、さまざまな価値観が入り乱れています。お互いにリスペクトし合える組織体制を考えたいです。

海外で自社を売り込む仕事をしていると、ローカルな知識も役立つんですよ。現地で福井についての話をすると興味を持ってくれるし、信頼もしてくれる。ここで学んだグローカル効果は想像以上でした。実は、私自身も「福井愛」が以前より強まったと感じています。授業で福井の歴史や企業について勉強しましたが、知らないことも結構あって、地元育ちの私にとっても新鮮でした。

福井をより好きになったというのは同感です。「国際」だけじゃなく、「地域」が入っていることが重要。

一度、福井から出て戻っている人は、「福井愛」ありますよね。私の会社のほとんどの人がそうです。

「福井愛」についてもそうですが、アウトプットの機会が増える度に、ここで学んだことが生かされていることを実感します。

「学び続けること」
を習慣化する

リカレント教育で自分をアップデート

大学院を離れてから、知識のアップデートはどういう風に考えていますか?私はもともとGoogle Scholarで文献を調べることがありましたが、その精度と角度が変わりました。読書量も増えて、気になる本があればすぐにストックし、移動中など時間をつくって読んでいます。

私も読書量が増えました。修了後も恩師の先生が読書会を開いてくれて、しばらく参加していました。管理職になると自分で判断することが増えてきますが、迷うことも多い。そんな時、指針になってくれるビジネス書や頼るべき人を選定するスキルを大学院で学ぶことができました。ビジネス書は今後も読み続けます。

私の場合、ひとつは語学のスキルアップですね。海外実地研修で伝わらないくやしさを経験したので。今はTOEICを受ける予定で、スコア800点台が目標です。仕事に関していえば、包括的な学びを経験してから、躊躇せずに新しい分野へ挑戦できるようになりました。例えば、アプリの運営で利用者の分析やデータ集計をしなくてはいけなのですが、大学院でデータ分析を学んでいるので苦手意識が低くなって、とりあえずやってみようというマインドになったかな。

大学院で普遍的な論やセオリーを学べたことの意義は大きいし、その後の学びにつながっています。例えば、マーケティングを強くしようと思ったら、学んだ論を自社の規模やスタイルに当てはめて、組織も変えていく必要がある。土台を理解していれば、応用が効く。私はもともと営業型で自分の興味のあることだけを勉強していたのですが、今はもっと幅広く学ぶようになりました。

私は「出世がしたい」という上昇志向があったんですよ。

はっきり宣言できるって、すがすがしい!

なので、大学院へ入る前は出世につながることだけを学んでいましたが、今はさまざまなジャンルの本を読むようになりました。大学院で久しぶりに学ぶ楽しさを実感して、吉田さんも言っていたとおり、興味の幅が広がりました。教養があればビジネスチャンスをつかみやすくなるし、何より人生が豊かになりますから。

この先に広がるビジョン

マネジメントリーダーとして目指すこと

そろそろラストの話題に入らないと。今後の展望で締めましょう。

海外実地研修ではカルチャーショックを受けましたが、収穫も大きかった。そう考えると、今後の人生で一度は海外の人たちとプロジェクトを進めて、そのマネジメントリーダーをやってみたいです。これまでそういう経験がなかったので。

私はやはり経営ビジョンかな。大学院でまとめた経営戦略を実践することで、会社は成長軌道に乗りつつあります。さらに飛躍するために、次の一手を考えないといけないので、今は学びなおしをしているところ。知識の深化、人脈づくり、実践的なビジネスという3つのバランスを取りながら進めていきたいです。そしてもうひとつ、同窓会を立ち上げたい。同じ意欲を持った修了生と定期的に情報交換できる場をつくりたいです。

私は福井から世界へ誇れる生き方をしたい。弊社はどんな社会状況でも正直な姿勢で、ビジネスを通じて社会貢献ができる会社。私の思いと弊社の理念は合致していますから、ゆくゆくは取締役になり、一緒に成長していきたいです。

ビジネスチャンスはさまざまな方向に広がっていく時代なので、ビジネスとしての水産はもちろん、地域とか、業界全体の発展とか、環境とか、多角的な視点でチャレンジしていきたいです。

MESSAGE

入学を考えている方へのメッセージ

チャレンジしてみる価値は大いにあると思います。想像をはるかに上回る貴重な経験と、副産物のようなメリットがあります!

大学院進学はひとつのチャンス、ぜひつかんでほしい。修了生に話を聞いても後悔している人はいません。再会した時に情報交換したり、それがいい刺激になったり、プラスになります。

「自分は忙しい」と思っている人ほどチャレンジしたほうがいい。忙しさを言い訳にしてチャレンジしない傾向があるので。2年間の学びは想定していなかった発見があると思います。逆に進学に向いていないのは、とりあえず大学院を修了して学歴がほしいと考えている人。そんなモチベーションでは乗り切れません。

他の大学院や海外の学校など、リカレント教育として他の選択肢もあると思いますが、ここでの学びのメリットは福井の発展を望んでいる人たちと交流ができること。地域貢献や活性化について学びたいなら、ぜひ入学をおすすめします。