1. 小規模の強みを活かす教育環境について

福井大学大学院国際地域マネジメント研究科の最大のメリットは、少人数制の教育環境にあります。
かつて批判された大規模な「マスプロ教育」とは正反対に、本研究科では教員と学生がじっくりと対話できる点が特徴です。教員は学生一人ひとりの状況を把握できるため、教える内容や授業のスピードを柔軟に調整でき、学習効果の点で理想的な環境が実現されています。学生指導においては、指導教員によるマンツーマン指導に加え、別の複数の教員が副担当としてサポートするなど、非常に手厚い教育環境が提供されています。教員はそれぞれの専門分野を持ち、一人だけで学生の多様な関心に応えるのは困難な部分もありますが、研究科全体では学生の多様なリクエストに「組織的に」応える体制が整っています。複数の教員がサポートすることで、学生はより良いアドバイスや幅広い案内を得ることができます。

2. 実務家教員の多さとその役割について

本研究科では、特に社会人学生の指導において実務家教員が中心的な役割を担っています。 社会人学生の大多数は、日々の仕事で抱える課題や問題意識を解決するために本研究科に入学しており、彼らに対する指導の多くは実務家教員が担っています。実務家教員は、学生と同じような現場での経験を積んだ「先輩」として、自身の経験や知見を学生に伝えることに力を入れています。特に2年次の海外実地研修や最終報告書の調査研究指導においては、この実務家教員中心の指導体制がとられています。学問的な理論を追求する「研究者教員」による座学も必要と認識していますが、本研究科では実務家教員の持つ実践的な知見をより重視しており、バランスを取りながら理論と実践を両立させることが大きな強みとなっています。

3. 研究テーマのディスカッションについて

本研究科には様々な魅力があると思いますが、その一つは、研究テーマの決定プロセスにおける「意見交換会」かもしれません。 この会は設立当初から実施されており、年に数回、1年次の全学生と実務家教員を中心に5~6名以上の主要な教員たちが集まります。そして、学生一人ひとりの海外研修や2年次の最終報告書のテーマについて、様々な角度から意見が交わされます。教員一人では応えられる範囲に限界があっても、全員で議論することで非常に多角的で質の高い意見が得られます。学生の意思を尊重しつつ、指導教員選びや海外研修の内容についてまで、学生の要望に応じた最善の学びの形を全員で検討するのです。これは一般的な大学院ではあまり見られない取り組みであり、教員間の「学び合い」の場ともなっていて、学生のみならず教員自身の視点や視野を広げる効果も生まれています。

4. 海外実地研修の意義と成果について

国際地域マネジメント研究科では「国際」と「地域」の両方を重視しており、2年次の必修科目である海外実地研修はその象徴と言ってよいです。
海外実地研修では、海外に展開する企業の従業員や、海外の先進的な取り組み事例を学びたい方を想定し、期間が長いプログラムでは数ヶ月から半年におよぶ長期の海外経験まで積むことができます。自国と異なる文化や制度に直接触れたり観察することは、翻って自国についての理解を格段に深化できるきっかけにもなります。これは、外国人の視点から自国を観察することにも近く、地元地域を新しい視点で見つめ直す機会にもなるのです。本研究科では、「グローバル人材」であり「ローカル人材」でもある、いわゆる「グローカル」な人材の育成を目指しています。国際理解を深めると同時に、福井のような地元地域の理解をも深めることも併せて狙っているのです。卒業生からも「国際を見ることで自分たちの地域を知る」という声が聞かれており、この狙いはある程度成功して評価されているようです。ものづくりの企業の例からもわかるのですが、「郷に入ってはまずは郷に従ってみる」という考え方は重要かもしれません。海外での経験は、日本での常識や固定観念を打ち破り、科学技術の分野においてさえ、国や地域が違えば異なる「技術的風土」や思考が存在することを知って目からうろこが落ちるような経験をしたエンジニアの社員さんがいたことをその会社の役員の方からお聞きしたこともあります。

5. 英語教育の実践と成果について

国際的な視点を持つ本研究科において、英語学習は必須の要素と位置づけられています。
国際地域学部での外国人教員の存在を背景に、本研究科では英語学習の機会をカリキュラムに組み込むことができています。卒業生からは、社会人になってからこれほど手厚い英語教育を受けられる場所は他にないとして、「非常にお得」という高い評価も得ています。
1年生は週2回、1時間半の授業を4~7人の少人数で受講します。一般的な英会話教室と比較すると「ありえない価格設定」で質の高い教育が得られ、実践的な英語力を養うことができます。授業はほぼ英語のみで行われ、実践力が磨かれると同時に、英会話教室に通うような感覚で英語を学ぶことができます。国際地域学部を持つ福井大学だからこそ実現できる独自の取り組みであり、英語力養成の機会が得られることは本研究科の強みであり「武器」であると認識されています。
新卒学生よりも、社会経験を積んだ社会人学生を中心に据えたカリキュラムが用意されているため、学生たち自身の実社会での経験を活かしたより深い学びが可能となっています。

6. 授業構成:地域理解、広い教養、思考力の育成について

本研究科の授業構成は、地域課題へのアプローチ、幅広い教養、そして思考力の育成に重点を置いています。
教員たちはそれぞれ異なる方法で授業を展開しており、「アクティブラーニング」の様々な手法が採用されています。ゲスト講師の招聘もあれば、グループワークやディベートを行う授業もあって、学生が「考える」機会やその考えを「表現する」機会が多く提供されています。インプットされた情報からアウトプットを行う作業を通じて思考力が鍛えられます。授業によっては、情報量が多くて学生には大変という意見を聞くこともありますが、「脳みそを洗われる」ような経験を通じて、情報を総合してまとめたり要点を絞り込んだりする能力が鍛えられます。一般的な大学学部での座学中心の授業とは異なり、ディベートやディスカッションなど、意見を述べる場が豊富に設けられており、社会人学生だからこその経験を生かして授業に積極的に参加できる部分もあると認識されています。教員は、社会人学生の皆さんから「中身のある現実的な意見」や「経験に裏打ちされた意見」が多く出てくることを期待しており、実際に学生相互の学び合いだけでなく、教員自身も学生から多くを学ばせていただいていると実感しています。
本研究科のカリキュラムは、毎年ではないものの、必要に応じて見直しやアップデートを行っています。海外実地研修については、海外進出を考えていない県内企業の社員には負担となることもありうる一方で、海外を知ることで「今の日本、福井だからこそできること」に気付くことができる機会にもなっていることも指摘されています。

7. これからの大学院教育:期待する学生の姿勢と資質について

今の時代の流れを踏まえて、福井大学全体としては本学を「学びの母港化」することを進めており、国際地域マネジメント研究科は、その動きの最先端の一つと位置づけられています。
現代社会の永続的で急速な変化のもとでは、若い時の学部学生時代に一度学んだ知識がいつまでも役立つわけではありません。今の時代では、生涯のうちに何度か繰り返して行う「学び直し」が重要になっています。本研究科は、社会人が自分の能力や知識をアップデートしてリフレッシュするために「戻ってこれる場所」、つまり「学びの母港」となることを目指しています。
本研究科は「国際」「地域」「マネジメント」という3領域を組み合わせた点にユニークさがありますが、特にマネジメント分野についてはさらなる充実が必要であろうと認識しています。社会人にとってはマネジメント能力は今後ますます重要になるため、この領域を強化することで企業へのアピール力も高まるのではと考えています。
これから入学する学生に期待する姿勢や資質としては、以下の点が挙げられます。

  • ● 現状に安住せず、新しい知識や経験を積むことに積極的であること。
  • ● 自身のもつ知見や能力のスキルアップに、関心を持ち続けること。
  • ● 自身の関心事や趣味などを育て、将来に向けて「アンテナを張って」もらえること。
  • ● その意味では、何よりも「好奇心」を持ち続けることが重要ではないでしょうか。

多様な背景を持つ学生と教員が集う本研究科は、学生にも教員にも新しい出会いの場を提供しているところがあります。そうした意欲的な人たちが出会い、交流することで、本研究科が地域における「回転軸」のような存在となり、人的ネットワークを大きく広げる可能性を秘めていると期待されています。

インタビューを終えて

福井大学大学院、どんなところか気になりましたよね?
国際地域マネジメント研究科は、少人数制教育で学生一人ひとりに寄り添う「寺子屋」のような環境が自慢です。経験豊富な実務家教員が、あなたの疑問に寄り添って、理論と実践の両面からサポートしてくれます。授業もディスカッションが多く、テーマを深掘りしたり、必修の海外実地研修で多角的な視点と実践力を養うことができます。ここで目指すのは、世界も地域もわかるグローカル人材です。
社会人の「学びの母港」として、知的好奇心があれば、新しい自分に出会えること間違いなしです!

インタビュー・文 / 2024年度入学(5期生) 竹島隆之助